会社の新人事制度について。
年功序列を廃して、成果主事の人事制度になり、降給、降格も発生します。
「一段上の仕事をした人に"より"報いる」
これが新人事制度のスローガンなんです。
一見正しいと思うのですが、
人件費の原資が一定だったとすると、
「主任の仕事をした主任はマイナス」
ということになってしまいそうです。
これまでどおり主任の給料がもらいたけれど、マネージャの仕事をしろって
いったら労働強化なんですよね。
だからこの点で組合が戦っているのは正しいと思います。
ただ、当社の人口構成から考えて、賃下げは避けられないような気もします。
自分が人事部で新人事制度設計せよと言われたら、
やっぱり50代の社員の給料をいかに削減するか考えると思いますね。
たとえば部下のいないマネージャーやプログラミングやってる主任(私だ)
を減給にするとか。
ここでノーベル経済学賞をとった、ダニエル・カーネマンのプロスペクト理論を紹介します。
プロスペクト理論によれば人間の感情というのは、利益と損失で非対称だとされます。
1万円得したときの喜びを1とすると、1万円損したときに悲しみはその3倍だと言われています。
人間というのは利得より損失のほうを3倍強く感じるのです。
ここで、横並び人事制度と成果主義人事制度で喜びの量を比較してみます。
仮に一人当たりの平均昇給額が3千円だとします。
・横並び人事制度
一段上の仕事をしたAさん:+5千円
役職どおりの仕事をしたBさん:+1千円
→喜びの総和、5千+1千=6千
→喜びの費用対効果=1.0
・降給ありの成果主義人事制度
Aさん:+9千円
Bさん:-3千円
→喜びの総和、9千円-3千×3=0
→喜びの費用対効果=0.0?!
理論的に言えば、成果主義というのは、全体最適には向かないのです。
あえて成果主義の側に立つなら、
・流動的な労働市場が形成される
と同時に、
・割り増し退職金による退職勧奨を容易にする
ような政策がとられれば、成果主事人事制度はうまく機能すると思います。
アメリカの企業は"UP or OUT"といわれていて、昇進しなければ退職勧奨されるのが当たり前です。
日本では、雇用が法律で守られているので、それができません。
仮に、労働法制の規制緩和により、退職勧奨がやりやすくなったとしても、
失業率がアメリカ並みになっては、GDPは増えない気がします。
退職した人が再就職しないと国家としては成り立たないのです。
したがって、50代で退職しても再就職できるような労働市場の流動化が必要なんです。
もっと具体的に言えば、アメリカと同様に採用面接時に年齢を聞くことを禁止にすべきなんです。そして定年退職制度も廃止すべきです。
そうすることで、50代で失業しても年齢的なハンディキャップを負わないし、
そんな差別をした企業は訴訟されてしまう、という社会にしないと成果主義は国レベルで機能しないのではないでしょうか。
まとめます。
1 終身雇用、非流動的な労働市場、横並び人事制度
これらがセットです。
ただこれは社員の人口構成の逆ピラミッド化で難しいです。
2 退職勧奨、流動的な労働市場、成果主義人事制度
これらがセットです。
流動的な労働市場が日本にないのが国家レベルの課題です。
どちらも難しいとなれば、「マイルドな成果主義」という選択もあります。
・マイルドな成果主義人事制度
Aさん:+6千円
Bさん:+0千円
→喜びの総和、6千+0千=6千
→喜びの費用対効果=6.0
このアイデアどうですかね。
物価が上がっているのに昇給が0というのは実質賃下です。
ただ、額面が下がらなければかなり感情的なダメージが少いです。
100万円の貯金が1年後に98万円に減ったらショックですよね。
でも、100万円の貯金が1年後に100万200円で2%インフレになっても
実質購買力が1万9800円減ってもあんまりショックじゃないですよね。
これなら理論的には成立する気がします。
これから書きたい記事
「物価上昇と賃上げ」
「ゆでがえる問題」
「年功序列は社会福祉制度」
↓↓↓↓よろしければクリックをお願い致します。